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2006年7月18日 (火)

連載少年冒険読みもの「山の中」第3回

「かわいそうだが、おじいさんはもう生きてはいないと思う」とオジさん。
「何らかの事情で遭難して、動けなくなったか、谷にでも落ちたか…」
 ソーナン? 
 遭難なんて、北アルプスとか谷川岳とか、そういうすごい山でするもんじゃないのか?
「どんな山でも遭難の危険はあるんだ。登山道から外れたり、けもの道で迷ったり、転落したり、クマに襲われたり」
 クマ!
 クマがいるのか? こんな住宅地に近い里山に―と、さらに驚くぼくに、オジさんの解説はいよいよ長くなった。

 結論を言うと、まちから見えるあの山地には、クマもサルもイノシシもいる。
 山のそばの家では、クマにクリの木の枝を折られたり、イノシシに畑を掘り返されたり、サルに台所に侵入されたりするんだってさ。
 で、そういう野生のけものたちは、山の中を一日で何十㌔も移動することもあるのだそうだ。

「じゃあ、行方不明のおじいさんは、もしかしてクマに襲われたかもしれないの?」
「いや、北海道のヒグマはともかく、本州のツキノワグマが積極的に人間を襲うことはない。クマのほうが臆病だから、人間の気配がすれば逃げていくよ。でも、人間の死体があったら、エサだと思って食べちゃうことはあるかもしれないなあ」
 怖いことを言うねえ。
 どっちにしろ、おじいさんが死んでいるとすれば、死体はもう腐り始めているだろう。
 その死体を捜しに行こうという、なんとも不謹慎な計画だ。
 おじいさんとご家族には申し訳ないけど、怖いもの見たさという気持ちは、強烈だからなあ。

「オジさんは土曜日がバイトだから、日曜日にしよう。一緒に行く子がいたら連れておいで」

 ぼくからすればオジさんはかあさんの同級生。オジさんからすればぼくは同級生の息子だ。
 妙な関係だけど、お互いの「身元」がはっきりして、つきあいやすくなった。

 その夜、かあさんはオジさんと電話で話していた。
「うちの息子をよろしく頼むわよ。あまり危ないことさせないでね」
 かあさんには、まさか「死体捜し」だとは言えない。オジさんに山歩きに連れて行ってもらうんだ、ってことにしてあるのさ。

(つづく)

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