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2006年7月 4日 (火)

連載少年冒険読みもの「山の中」第1回

「ヨースケくん。あの事件は知っているだろう」
 オジさんはいきなり切り出した。五月の木曜日の放課後のことだ。
「死体を捜しに行ってみようか」
「え、ええ?」
 ぼくはすぐには返事ができなかった。
 オジさん、ホントに本気なのか? でも、ちょっとおもしろそうかも!という気持ちもぼくの中にあったから。

 オジさんとはこの春知り合ったばかりだけれど、最近、毎日のようによく会う。

 ぼくの名前は齋藤洋介。群馬県内の市にある光小学校に通う六年生だ。
 生まれたのは神奈川県の横浜市郊外で、この三月までは、かあさんと姉ちゃんと三人で川崎市の多摩川のそばに住んでいた。
 かあさんととうさんは、ぼくが二年生のときに離婚して、それ以来うちは母子家庭というわけ。
 群馬県のこのまちには、かあさんの実家があって、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる。ぼくも毎年夏休みには遊びに来ていた家だ。
 おじいちゃんが入院したのをきっかけに、ここへ一家で引っ越してきた。

 ところで齋藤という名字(うちは離婚してもとうさんの名字を名乗っている)はどこにでもある、ありふれた名字だけど、この「齋」の字を書ける人は少ない。「斎藤」と書ける人はまだいいほうで、思いきり略して「斉藤」なんて書く人もいる。これじゃ、セイトウじゃないの?
 新しい学校の担任は、まだ若い女の体育の先生で、六年生の一学期に転校してきたぼくをクラスで紹介するのに、黒板に「斉藤」と書いた。ぼくが「齋藤」と書き直したら(いきなりやりすぎかなとは思ったけど)、目を丸くしていた。先生やクラスのみんなには、ちょっと生意気なヤツだと思われたかもね。
 四年生のときの通知表には「分析力が秀でている」と書かれた。五年生のときは「クラスいちばんの読書家で理論家」と皮肉っぽく書かれた。ようするに、かわいくない理屈屋っていうこと?

 ぼくも姉ちゃんも転校は三回目だ。
 引っ越しのとき、かあさんは「あーあ、とうとう都落ちかあ」とため息をついていたっけ。でも、おじいちゃんの具合も思ったよりいいらしく、かあさんの気持ちも落ち着いてきたみたい。このまちでパート仕事を探しているようだ。
 姉ちゃんも前の学校の友達と別れるときは泣いていたけど、今では小学校と地続きの光中学校に元気に通っている。女の友情は、わりとさっぱりしているからなあ。
 ぼくは家族の中ではいちばんクールだといわれている。それでも内心、やっぱりさびしかったよ。転校したばかりで友達もいないし。
 そんなとき、学校の帰り道にある市立図書館で出会ったのが、オジさんだった。

(つづく)

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