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2006年8月 1日 (火)

連載少年冒険読みもの「山の中」第5回

 スギやヒノキの植林に囲まれた尾根道は、なんとなく薄暗い。もう平地の景色も見えない。
 朝のうちは明るかった空も、少し雲が増えてきたみたいだ。

 雷電山のてっぺんから、ぐーっと一回下る。せっかく登ってきたのに、その分また下って、また登るんだ。
 オジさんによれば、これを繰り返すのが「山岳縦走」というものだそうだ。

 次の山のてっぺんには、電力会社の「無線反射板」というのが立っていた。ちゃんと説明が書いてある。非常時の通信に使うものらしい。
 まちから見て、山の上にベニヤ板みたいなものがあるのは、ぼくも気がついていた。こうやってすぐ近くで見ると、畳十枚、いや二十枚分くらいはある。大きなもんだな。
 まわりは岩場で、松の木が何本かある。

「じつはオジさんが高校生のときに、ここで首つりがあってさ。クラスのみんなで見に行ってみようって、放課後に登ったことがあったのさ」
 もちろん、死体は警察が片づけたあとで、ここまで来てもなんにもなかった―って。あたりまえだろ。高校生って、けっこうバカだなあ。
 ここからまた下って、また登る。ときどき遠くの山並みが見える。うわあ、ホントにずっと山がつながってるんだ。

 それからまた二つくらい山を越えた。もうすっかり山奥って感じで、すれ違う人もいなくなった。

 やけにボロボロの、道案内の標識が立っていた。
 近づいて見てみると、「黒神山」「城沢峠まで1㌔」とやっと読める。
 しかしひどくバラバラに壊れた標識だな。
 狩猟をするハンターが、散弾銃をぶっ放して壊したら、こんな感じになるかもね。

 オジさんは「ここでひと休みだ」と言いながら、また話し始めた。
「じつは雷電山友の会の会長さんに会って、少し話を聞いてきた。会長さんはもと校長先生だった人なんだ」
 オジさんが仕込んできた「新聞には出ていない話」というのはこうだ。

 行方不明になったおじいさんというのは、体は丈夫だが、認知症っていうのかな? ちょっとボケが始まっていたらしい。
 そのことはまわりの人もうすうす気がついていて、雷電山でおじいさんに最後に会った人も、「一人で山道を歩いて大丈夫かな?」と心配に思ったそうだ。
 もうひとつ。
 そのおじいさんは山の中で必ずキジうちをする癖があって―知らない? ウンコをすることだって―登山道から外れて山林の中へ入っていってしまうことがよくあったんだって。
 なるほど。いかにも遭難しそうだなあ。

 話はさらにもうひとつ。
 友の会の会員の知り合いに「霊能力者」がいて(ホントかな?)、おじいさんの居場所を占ったんだって!
「そしたら、おじいさんはやはりもう亡くなっているんだけど、黒神山から城沢峠のあいだにいるっていう<お告げ>があったんだとさ」
 へええ!
「ここがその黒神山だ」

(つづく)

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