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2006年8月16日 (水)

連載少年冒険読みもの「山の中」第7回

 もうどれくらい歩いたのか分からなくなってきた。

 木に目印をつけながら歩けばよかった。うちからビニールテープでも持ってきてれば、と思ったが、こういうのを後のまつりというんだな。
 自分の歩いているのが、けもの道かどうかもあやしくなってきた。
 ただヤブをかき分けているような感じだ。

 完全に迷った。まずい。

 もとの尾根道へ戻ろうと歩けそうな場所を探したけど、どうやら大きな岩場の下へ回り込んでしまったみたいだ。
 上へ登ろうとしても、すき間が見つからない。

「落ち着け、落ち着け」
 自分に言い聞かせる。心臓は少しドキドキいってる。

 倒れた木の上に座って、ぼくは考えた。

 ケータイ電話と地図は―オジさんが持っている。
 磁石は―百円ショップで買ったのを持っているが、北がどっち側なのかが、だいたい分かる程度だ。
 時計は持っていない。いま何時なのか。まだお昼前なのか。それともお昼をすぎたのか。
 林の中はただ薄暗いだけだ。

 デイパックから、お昼に食べる予定のお弁当を取り出した。
 かあさんのつくってくれたおにぎりを口に入れてみた。
 うまい。
 かあさんは料理が上手だ。
 きょうぼくが帰れなかったら、かあさんはひどく心配するだろうな。
 そういえばヤマザワはヘッドランプとか寝袋とか、非常用のカンパンとかまで持っていたなあ。ぼくもあんなものを持っていればよかったかなあ。
 だけど、こんな山の中で、一人きりで夜を迎える自分を想像したら、ブルッとした。
 なんとかして帰らなくちゃ…。

 音が聞こえる。

 気のせいかと思ったけど違う。
 山の下のほうから聞こえる。
 水の流れる音だ。川があるのか?

 ペットボトルの水を飲みながら音のするほうへ行ってみると、岩の下が崖になっている。
 わあ、知らないで下りてたら転落するところだったよ、とすくんだ瞬間、うっかり手からペットボトルを落とした。
 ペットボトルは崖下へ転がった。

 カラン、カラン、コロン…

 水の流れはここからは見えないけど、やっぱり細い谷川があるんだ。

(つづく)

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コメント

毎日暑い日が続きますがお元気ですか。わたしも14日に友人を連れて戦場が原を歩いて来ました。わりとすいていました。FMの件はうまくいってますか。

投稿: yt | 2006年8月20日 (日) 09時13分

コメントありがとう。左の奥歯の下の件で近くお世話になりたいと思います。FMの件はちょうど今夜これから会合があり少しずつ形が見えてくるかと……。

投稿: ほぼ失業者 | 2006年8月20日 (日) 17時35分

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