2007年2月28日 (水)

砂の器

Photo_72 原作は松本清張。
 脚本は橋本忍と山田洋次。
 監督は野村芳太郎。

 巨匠・名匠が手がけ、興行的にも大ヒットを収めたというから、観た人も多いに違いない。

 邦画ファンならばご存じ
 1974年制作の松竹映画
 「砂の器」

 もう30年以上前に作られたミステリー、というかサスペンス映画の大作である。

 まさかもう劇場のスクリーンで観ることは叶わないと思っていたが。
 この2007年の2月に上映していたのである。

 それも、いつも行くイオンシネマ太田で。
 過去の名作を選りすぐって上映するという「イオン名作座」。
 上映期間は2月24日から3月4日まで。

 封切りのとき、ワタシは大学生になったばかりだった。
 上野駅公園口の上野松竹で一人で観て、とにかくびっくりした。
 日本映画で、こんなにおもしろいミステリーもの、サスペンスものがあるのかと。
 犯罪。捜査。謎解き。
 その背景にある過去の因縁。

 こうしたジャンルでは、黒澤明の「天国と地獄」(1963年、東宝)を子どもの時に観て以来の衝撃であった。

 一人の老人が殺害された蒲田操車場殺人事件。

 捜査の主力は警視庁捜査一課のベテラン今西栄太郎(丹波哲郎)と、所轄である西蒲田署の若い刑事・吉村正(森田健作)。
 被害者の身元は不明。
 ※被害者はやがて、岡山の雑貨商であり、昔は島根県で巡査をしていた三木謙一(緒形拳)であることが分かるのだが…

2 難事件だった。
 「東北弁のカメダ」という言葉だけが頼りだ。
 二人の刑事は、特に今西は秋田、島根、石川、大阪、伊勢と、謎を追って日本を駆けめぐる。
 そして、事件の影に若き天才音楽家・和賀英良(加藤剛)の姿を見るのだった。

 ストーリーの説明なんかしていては、とても書ききれない。

 そういうわけで。
 初めて上野松竹で観たあとも、別の映画館で2、3回は観た。
 ビデオでも観た。

 原作の小説も読み、ストーリーがかなり違うことも分かった。
 映画のほうは、特に後半、橋本忍と山田洋次によって大きく改変・潤色されている。
 それが成功したわけだが。

 それで。
 今月たまたま、みどり市立大間々図書館でビデオをまた借りて、観たばかりだったのである。
 その直後、イオンシネマ太田で上映していると知り、たまらず観に行ったというわけ。

2_1 ストーリーも、シーン展開も、台詞も分かっている。
 それを劇場の大スクリーンで観たかったのである。

 かつて、映画フィルムが古くなって傷むと、「雨が降っている」といわれる、ひどい映像になったものだった。
 しかし最近は、デジタルリマスターという技術で、きれいに甦っているのだ。

 「砂の器」もデジタルリマスター版で甦った。
 スクリーンで観ても、傷はほとんど感じられない。
 色もいい。

 やっぱり映画は
 映画館で観なくちゃ、ダメだなあ。

 実感。

 ワタシの特に好きなシーン。

 まず、蒲田操車場での遺体発見。
 ドキュメンタリーのニュース映像のようで、怖かった。
 ホントに人殺しがあり、惨い死体が見つかったんだな、という迫真性があった。
 (テレビの2時間ドラマの遺体発見なんか、あんまり軽くて)
 迫真の映像に字幕が重なり、いよいよリアルな感じ。
 字幕をかぶせるのが効果的でしたね。全編にわたり。

 「東北弁のカメダ」の意味。
 今西が考えをめぐらし、国立国語研究所を訪ねる。
 果たして、東北弁に聞こえるズーズー弁が、島根県の出雲地方でも使われていることが判明するシーン。
 いい。
 これはねえ。なんと、原作の小説にも、説明のための日本地図を載せたページがあるのです。

 和賀英良の逮捕状を請求するクライマックスの捜査会議。
 今西の報告に捜査一課長が驚く。

 「なに!? 本浦千代吉が生きている!?」

 いいねえ。
 きりがないですねえ。

 で。
 名作とひと口にいわれてしまう「砂の器」だけれど、ストーリー上の無理や矛盾、腑に落ちない点などが、多くの映画関係者やファンに指摘されている。
 ツッコミどころも多いのである。

 この作品のアラも、また書いてみたい。

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2006年12月26日 (火)

浅田次郎 泣かせるぜ

Photo_47 きょうは年内最後の里芋掘りをする予定だったが、雨だから中止。
 しかしよく降るねえ。クリスマスを過ぎた年の瀬に、こんなまとまった雨が降るなんて。
 しかも暖かい。

 浅田次郎の小説を原作にした映画の話をしていたところであった。

 写真のオッサンがベストセラー作家、浅田次郎さん。

 1999年制作の映画「鉄道員(ぽっぽや)」を、なぜ今ごろ観たのかというと、太田イオンシネマの開館3周年記念企画だとかで、過去の名作を500円で上映していたのであった。11月末で終了。

 このとき、上映直前に火災報知装置が作動するハプニングがあった。

 「火災が発生しました。係員の誘導に従って避難してください」とテープ放送も流れたのである。
 前列にいた女性が「出たほうがいいですかね?」と聞いてきた。
 見ず知らずの人にそんなことを相談されても困る。
 そんなことは自分のアタマで即座に判断しないと、万が一のときに命を落とすぞ。

 ロビーに出た。
 じっさいには何もなく誤作動と分かった。
 それで、イオンシネマからは「お詫びに」と、観客一人ひとりに招待券1枚が渡された。
 いろいろなことがあるものである。

 ワタシの観ようとしていた「鉄道員(ぽっぽや)」はまだ上映が始まる直前で、中断された訳ではなかった。
 ほかのスクリーンでは中断もあったようだ。
 結果的にはラッキーであった。

 このときロビーに飛び出してきたかたがたの様子を見ると。
 「プラダを着た悪魔」を観にきていたオネエサマ、オバサマの数が圧倒的であった。

 水曜日だから、レディースデーだったのね。

 まったく平日の午前中から、いいご身分である。
 こっちもだが。

 浅田次郎原作の大人のファンタジーといえば、「地下鉄(メトロ)に乗って」もそうなのだが、これは観るつもりはない。

 女優の岡本綾が好きじゃないのである。
 つまらなそう。

 中村獅童の酒気帯び運転事件では少し見直したけど。

 こういっちゃなんだが、郵便局とか農協のポスターで微笑んでいるのがお似合いじゃないの?
 いい女ぶってもサマにならないのである。
 誤解でしょうか。
 そのほかの役者はいい。堤真一、田中泯、笹野高史なんかはぜひ観たい役者さんなのだが。

 浅田次郎の直木賞受賞作「鉄道員(ぽっぽや)」は、ご存じのとおり「泣かせ」の短編集である。

 ホントに泣いちゃうから、夜中にでも一人隠れて読むのがよろしい。

 表題作「鉄道員」もいいけどね。
 この短編集に収められている「ラブ・レター」には号泣した。
 たまらん。
 うまい。うますぎるぞ浅田。

 中国人の出稼ぎホステスと偽装結婚したチンピラヤクザの話。

 死んだホステスが書き残した恋文。

 余談だが。
 大学の教育学部国語科の講義で「恋文」を取り上げたときに、この「ラブ・レター」の恋文を教授が朗読したんだそうである。
 教授は朗読の途中、思わず声を詰まらせ、涙ぐんでしまったそうな。

 恐ろしい威力である。
 チンピラヤクザもたまらず心を入れかえて足を洗っちゃうよ。

 で。
 「ラブ・レター」も中井貴一主演で映画化されたんだが、評判はよろしくなかったそうである。
 それはそうでしょう。
 原作を読んだ人が観たら、もうそれは、ものすごい思い入れがあるわけだから。「全然違う!」ってことになっちゃう。

 それにだいいち、ミスキャストである。
 中井貴一がどこをどうやったって、歌舞伎町のチンピラヤクザには見えないでしょう。
 最初から誠実そうなチンピラ、既に「改心済み」のヤクザである。

 いくらワルぶったって、スゴんだって、ホントはいい人なんでしょ。
 最後は善人になっちゃうんでしょ。

 ちなみに、「鉄道員」も「ラブ・レター」も映画化のほか、舞台演劇にも、マンガ作品にもなっているそうである。
 いろんなことを考えるクリエーターがいるものだ。

 なかなか「007」の話に行けないな。

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2006年10月 6日 (金)

小林まこと「格闘探偵団」発見

Photo_32  きょうは十五夜だというのに大雨洪水注意報だ。
 実際にはあす7日が満月。
 このへんの月齢と旧暦の仕組みは、いまひとつ分からない。

 右ひざを痛めて、先週9月28日の木曜日から接骨院へ行っている。
 接骨院なんかへ行くのは2年ぶり以上だ。
 桐生市内のN接骨院。きのうまで7回行った。

 体に故障があると、野山歩きもウオーキングも自転車も、なかなか思うにまかせない。
 雨で、体が動かせないときは、読書である。
 マンガも読書のうちだ。

 じつはN接骨院は、待合室のマンガ本の品揃えがいいのである。
 ここで、たいへんな発見をした。

 小林まこと先生という高名な漫画家がいる。

 「ホワッツ マイケル?」という猫マンガが有名であるが、格闘マンガも有名なのである。
 「柔道部物語」とか「1・2の三四郎」とか。

 ウチにも「1・2の三四郎」の第2シリーズ、「1・2の三四郎2」のコミックス全6巻がある。もう8年も前のものだが。おもしろい。講談社のヤングマガジンに連載していた作品だ。

 で、N接骨院の待合室で見つけたというのは

小林まこと先生の
「格闘探偵団」

Sansiro  知らなかった。こんなものが出ていたとは。
 迂闊であった。
 読んでみたら、登場人物もなにも「1・2の三四郎2」の続編ではないかっ。
 講談社のイブニングに連載されて、もうとっくにコミックスになっていたのであった。

 小林まこと先生の格闘マンガは、大男の格闘あり、ギャグあり、美女あり、お色気あり。いい。
 それに加えて、事件あり、犯罪あり、探偵あり、刑事あり、謎解きあり。たいへんいい。

 待合室で読んでいたのでは短時間なのでとても読みきれない。

 ああ、もどかしい。

 これはなんとしても探し出して買わなければ。

 こういうときはBookOffである。

 あった。
 10月1日(日)、発見。
 「格闘探偵団」全5冊セットがあった。表示価格は1500円であるが、セットものは半額セールだとかで750円。
 こんなことが、とてもうれしい。
 欲しくて探していたものが思惑どおり見つかって、それが750円とは。いうことなし。

 BookOffさん、ありがとう。パート主婦から出世したという話題の女性社長さん、がんばってください。

 さっそく全部読みました。
 ついでに、8年前に買った「1・2の三四郎2」も全部読み返してしまった。
 おもしろい。

 マンガでも小説でもそうだけど、一度読んだものを何年か経ってから読み返してみると、「あれえ?こんな話だったかなあ」と意外に思うことがありますね。大筋だけは覚えてるんだけどね。
 今度もそうだった。

 思い起こせば8年前。仕事でちょっとつらいことが続いた時期で、鬱々としていたなあ。
 そんなときに気を紛らわそうと、この傑作ギャグ格闘マンガを読んだんだなあ。
 でも、心からは楽しめなかった。

 だから今度読み返したとき、初めて読んだように新鮮に楽しめたのかも。

 そのつらい仕事をしていた会社を離脱して、ほぼ失業状態も2年。これはこれでたいへんだが。

 それはともかく、風が吹けば桶屋が儲かる、という言葉もあるように、人間の考えること、やることは、巡り合わせの連続なんだね、と思ったよ。

 ひざを痛める→接骨院へ行く→マンガを見つける→欲しくなる→BookOffを探す→発見して買う→読む→8年前の作品も読む→8年前の自分を思い返す

 出発点は「ひざを痛める」だったけど、その前に、なぜひざを痛めたかを辿っていくと―ああ、これはエラいことだ。際限なくさかのぼることができる。

 小林まこと先生の作品のほかにも、ウチにはバロン吉元先生の古典的名作「柔侠伝」「昭和柔侠伝」、巨匠・浦沢直樹先生の「YAWARA!」も全巻ある。
 格闘もの、好きなんだな。

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